- 名称
- 麓井酒造株式会社
- 所在地
- 山形県酒田市麓字横道32番地
- 代表
- 佐藤 市郎
- 杜氏
- 佐藤 伸
- 仕込水
- 鳥海山の伏流水
- TEL
- 0234-64-2002
- HP
- http://www.fumotoi.co.jp/
弊社の歴史、そして水
弊社は明治27年(1894年)に創業しました。かつて庄内藩主としてこの一帯を治めた酒井家ゆかりの方が当家を訪れ、「この水で酒屋をやらない手は無い」と強く勧められたことから造り酒屋を興したと伝えられています。現在でもこの井戸水の水質は健在で、酒造りの全ての工程に無濾過で使用されています。弊社の商標「麓井」(ふもとい)もこの創業のエピソードと井戸水にちなんだものです。創業当時、この一帯の地名は「麓村」と申しました。また、弊社は東北屈指の標高を誇る名山「鳥海山」の麓にあります。そして、創業のきっかけとなった井戸水と酒井家の「井」を掛け、「麓井」と命名されました。
技術と経験に裏打ちされた「うまさのための」きもと造り
弊社のお酒は普通酒から大吟醸酒に至るすべてがきもと造りで造られています。きもと造りは古来からの日本酒の造り方で、仕込み水や空気中に存在する微生物の作用によりお酒のもと「酒母」をつくりお酒を醸す方法です。そのお酒は、一般的にキレがよく、また多種多様な有機酸により味わいが深いものとなります。タイプにもよりますが、冷酒からお燗まで幅広い温度で楽しむことができるお酒が多いことも特徴のひとつです。 酒造りの理論が確立されていない時代、目に見えない微生物の働きに全てをゆだねるきもと造りは一度すたれましたが、現在は理論もきちんと確立され、「きもと造り」を復活させる蔵が増えています。その中で弊社は、「きもと造りはおいしいお酒を造るための技術の一つ」と考えています。弊社がすべての造りをきもと造りで行うことも、あくまで手段としてのきもと造りであり、伊達や酔狂ではないことの証です。昨今、火入れの遅れなど後処理のまずさや、保存状態の悪さを「きもとだから」とか「個性だから」とごまかしているとしか思えないお酒も散見されます。本来、きもと造りだからといって最初から老ねていたり、鈍重であったりすることはありません。
新・銘醸地の源流
きもと造りという伝統的な手法を重んじながらも、弊社は酒質向上のための新技術や設備の導入も積極的に行ってきました。吟醸造りに没頭した先々代社長の佐藤長助は、吟醸造りのための新兵器を他社に先駆けて導入してきました。高火力の和釜バーナー、それにも飽き足らず高出力のボイラーとスーパーヒーター、そしてサーマルタンク等々、現在では定番となっている設備ですが、その導入は山形県内でも群を抜いて早いもので、他の蔵から見学に来た人々を驚かせました。
日本酒の未来に向けて
昭和48年以降、日本酒の消費量は右肩下がりで減少を続けてきました。いつしか流通する酒類の70%以上がビールか発泡酒となり、近年はワインや焼酎のブーム、国酒であったはずの日本酒の存在価値がますます問われています。日本酒は「過去の酒」として廃れて行く運命なのでしょうか? 否、麓井はそうは考えません。西欧化された食生活は、スローフードの風潮や食材の安全性への疑問によって大きく揺らいでいます。また、団塊ジュニアと呼ばれる世代ですが、一見豊かに見えても画一化、西洋化された食の中で育った彼らにとって、懐石料理に代表される洗練された和食や各地方の文化に根ざした個性的な食文化は新鮮なものです。彼らが人間として成熟してくるにつれ、「本物の和食」が見直されるときが必ずくると思うのです。そんなとき、和食の文化の一翼を担う日本酒が無くなっていたら、彼らの帰るべき場所は無くなってしまいます。食中酒としての役割には、奇をてらわず安心感のある味わいのお酒が求められます。また口の中を洗い流すビールや蒸留酒でも結構ですが、料理の味を膨らませ引き立てあう醸造酒、すなわち日本酒のほうがより向いているはずです。 とは言え、1,000をゆうに越える蔵がひしめき個性を競うこの業界では、お客様からアンケートをとって最大公約数を割り出したような酒造りにも意味がありません。まして、他社の商品のものまねや目先の流行を追うことの無意味さは言わずもがなです。「呑み飽きしない素直さ」、「料理と引き立てあう豊かさ」、「個性的であること」、「高級感ある香味」、えてして相反することが多いその微妙なバランスを追求していくことは難しいことです。しかし麓井は地道にその作業を積み重ねて、今は日本酒から離れているお客様を、将来少しでも暖かくお迎えできればと思うのです。